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ジョブ型雇用について徹底解説-メリットやメンバーシップ型との違いについて

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近年注目を浴びる新たな採用の形、ジョブ型雇用。働き方の多様化が進む現代において企業、労働者の双方にメリットがある雇用システムとして、導入を決断する企業も目立ち始めています。

そこで今回は、日本で広く浸透するメンバーシップ型雇用との違いを含め、ジョブ型雇用の定義や導入の流れなどを解説します。

1. ジョブ型雇用とは

ジョブ型雇用とは、職務内容や勤務条件などをあらかじめ明確化したうえで人材を確保する雇用手法です。おのおのが担うべき職務や責任の範囲、就業場所や労働時間が職務記述書(ジョブディスクリプション)に盛り込まれており、部署異動や勤務地変更、昇格・降格などの人事は基本的に発生しません。

また、あくまでも仕事ありきのシステムのため、該当の業務の完了をもって雇用契約が終了するケースも多くあります。

1-1. メンバーシップ型雇用との違い

メンバーシップ型雇用は、進行する各業務に確保した人材を割り当てる雇用スタイルです。職務内容や勤務条件などは人事により決定されるため、多くの従業員は在籍中に何らかの労働環境の変化を経験します。多くの経験を与えることで本人の適性を見極め、能力を伸ばすと共に自社に適した人材へ育成する、長期視点のシステムです。

2. ジョブ型雇用が注目された背景

近年ジョブ型雇用が注目されている背景には、主に以下の3点が影響していると考えられます。

2-1. 日本ではメンバーシップ型雇用が主流

日本ではこれまで、長きに渡りメンバーシップ型雇用が採用されてきました。現行の新卒採用、中途採用のほとんどのケースはメンバーシップ型雇用に該当します。

メンバーシップ型雇用は長期を見据えた雇用システムであることから、終身雇用が大前提です。勤続年数が長くなるほど昇級昇格し、定年退職時には退職金が受け取れます。その安心感を担保に、優秀な人材の長期的な保有を実現してきました。

ただ、かつては当たり前だった終身雇用制度も、2022年現在では「継続が難しい」と表明する大企業も見受けられ、時代の移り変わりとともに雇用制度のあり方も変化しつつあります。

2-2. テレワーク・リモートワークの普及

働き方改革の推進や2020年から続く新型コロナウィルスの流行により、テレワーク・リモートワークが広く普及しました。しかし、従業員の仕事ぶりや状況をリアルタイムで把握しづらいテレワーク・リモートワークはメンバーシップ型雇用の業務管理や人事評価を複雑化させ、公平性が損なわれる一因となる可能性があります。

対して、職務内容や責任の所在が明確化され、特定の分野に強みを持つスペシャリスト人材を保有・育成しやすいジョブ型雇用であれば、業務管理はシンプルでわかりやすく、従業員本人にとっても管理をする上司にとっても負担が少なくなります。

2-3. 働き方が多様化してきている

働き方改革が浸透し始めたことで、自身の理想とする働き方や、介護や育児との両立が図れる働き方を労働者自身が選択できる時代が到来しました。従来であれば、一つの企業で定年まで勤め上げることや副業が禁止されていることが当たり前の概念でしたが、現在は労働者が自分に合った環境を求め主体的に働く場所を変えていく時代となっています。

このような環境と労働者の意識の変革が、ジョブ型雇用にスポットライトが当たる理由の一つといえます。

3. ジョブ型雇用のメリット

ジョブ型雇用のメリットとしては、主に以下の4点が挙げられます。

3-1. 専門分野に強い人材を確保できる

ジョブ型雇用では、特定分野のスキルや経験が豊富な専門家の確保も比較的容易です。業務領域や責任が明瞭なため、労働者に能力を発揮してもらいやすい労働環境が提供可能で、人材のミスマッチも発生しにくくなります。

3.2. テレワーク・リモートワークとの親和性が高い

ジョブ型雇用はテレワーク・リモートワークの特性にマッチしたシステムです。メンバーの複雑な業務管理を要さないため、管理職にかかる負担が軽減されます。

3-3. 組織パフォーマンスの向上が期待できる

ジョブ型雇用では業務遂行に適した人材の雇用が前提となるため、即戦力として活躍が期待できる人材を選抜でき、結果として組織パフォーマンスの向上が期待できます。また、一人ひとりが専門分野に特化しているため、余剰人材の発生を防ぐこともできます。

3-4. 人材の育成がしやすい

広範囲を網羅しなければならないメンバーシップ型雇用とは異なり、ジョブ型雇用はあらかじめ定められた範囲に対してスキルや経験を深めることに集中でき、効果的な人材育成が実現しやすくなります。

また、企業側にもたらされるこれらのメリットの一方、労働者側にも以下のようなメリットがもたらされます。

  • 自分の得意分野でチャレンジができる
  • スキルや経験を重ね専門性を高められる
  • 専門分野に特化できる分、昇給昇格が比較的容易
  • 異動や転勤の可能性がほぼない

4. ジョブ型雇用のデメリット

前項のようなメリットを享受できる一方で、ジョブ型雇用にはデメリットも存在します。ジョブ型雇用の採用を検討している企業は、メリットとデメリットの双方を理解した上で判断することが重要です。

4-1. 人材不足につながる可能性がある

ジョブ型雇用では、専門分野に強い人材の確保ができることがメリットとしてありましたが、条件の良い企業へと労働者が集中してしまう可能性もあります。 そのため、競争率の高い専門分野においては、人材の不足につながる恐れもあります。

また、あくまでも業務ありきの雇用システムとなるため、企業に対する愛着や帰属意識が養われにくいといった側面もあります。

4-2. 制度を見直す必要がある

ジョブ型雇用は従来のメンバーシップ型雇用とは根本的に雇用のあり方が異なるため、社内制度の見直しを図る必要があります。

たとえば給与形態に関しては、メンバーシップ型雇用は職能給が一般的であるのに対し、ジョブ型雇用は職務給です。ジョブ型雇用を導入する際は、メンバーシップ型雇用からの制度を引き継いだときに不具合が生じる部分を洗い出し、ジョブ型雇用に適した制度を策定していかなければなりません。

4-3. 会社都合での異動や転勤ができない

ジョブ型雇用は職務記述書内で定めた部署、勤務地からの変更が生じないシステムです。そのため、会社都合での異動や転勤が生じる場合は、該当する従業員の承諾を受けて再度職務記述書を作成する必要があります。一方、従業員側には企業の要請を拒否する権利があるため、必ずしも会社側の意図する結果が得られるとは限りません。

5. メンバーシップ型雇用のメリット・デメリット

ここまで、ジョブ型雇用のメリット・デメリットについて解説しましたが、従来のメンバーシップ型雇用にもメリット、デメリットがそれぞれあります。

5-1. メリット

  • 長期的、かつ安定的に人材を確保しやすい
  • 会社に対する帰属意識を育みやすい
  • 一人ひとりの適性や可能性を見極め、長期的に育成できる
  • 自社ならではの手法やスキルを伝承しやすい

長期視点での雇用システムであることから、安定的な人材確保や個人の能力に合わせた育成ができることが挙げられます。

5-2. デメリット

  • 企業や業務と従業員のミスマッチが起こるリスクが高まる
  • 高い専門性を持つ人材が不足するリスクがある
  • 年功序列により、能力に見合わない高額な人件費が発生する可能性がある
  • 上記により若手のモチベーションが損なわれ、企業全体の生産性が低下するリスクがある

デメリットとしては、従業員とのミスマッチによるトラブルや、専門性の高い知識を持った人材不足のリスクなどがあります。

6. ジョブ型雇用を導入する際の課題や注意点

ジョブ型雇用の導入時には以下の3点について理解を深めておきましょう。

6-1. 運用ルールを定めておく必要がある

ジョブ型雇用を導入する際にはあらかじめ詳細な雇用ルールを定める必要があります。

規制改革推進会議公表の意見書には、ジョブ型雇用をする際に書面において労働条件の確認をしていなかったために従業員の不満を招いたり、トラブルに発展したりするケースも多く見受けられていたことが記載されています。 今後のジョブ型雇用の導入にあたっては、従業員が安心して働けるよう、書面を用いて労働条件を明示し、企業、従業員双方で確認を行うことをおすすめします。

ジョブ型正社員(勤務地限定正社員、職務限定正社員等)の雇用ルールの明確化に関する意見 - 規制改革推進会議

6-2. コミュニケーション不足にならないように対策が必要

各従業員が目の前の業務に集中して対応できるのがジョブ型雇用のメリットです。しかし同時に、チーム間でのコミュニケーション不足を引き起こす要因にもなりかねないことを理解しておかなければなりません。情報共有や困りごとなどの相談ができる、個人面談やチームミーティングの機会を定期的に設けるなど、何らかの対策を講じましょう。

6-3. 社内の意識改革も重要

ジョブ型雇用の導入後は、ジョブ型雇用で迎えた新規従業員とメンバーシップ型雇用で採用された既存従業員が共存することになります。そのため、社内の意識改革を行わなければ双方の間に摩擦が生じる可能性が高まります。経営陣や人事担当者には、ジョブ型雇用導入の経緯や目的、仕組みについて社員全員に丁寧な説明を行い、誤解や不公平感を与えないよう配慮のある対応が望まれます。

7. ジョブ型雇用の導入の流れ

ジョブ型雇用の導入が決定したら、以下の4つのステップで具体的な計画を進めていきましょう。

7-1. 職務の定義

ジョブ型雇用で求める職務について定義づけをします。名称、内容、担当領域、目的、権限や責任の範疇、求める成果、必要なスキルなどを明確化しましょう。後で不具合が生じないよう、経営層や関連部署と連携を取りながら進めます。

7-2. 職務記述書の作成

上記内容を盛り込んだ職務記述書を作成します。書面と実態に齟齬が生じると従業員とのトラブルの原因となりかねないため、関係者と協議を重ねながら完成させましょう。

7-3. 報酬を決定する

ジョブ型雇用の報酬は職務に対する成果から決定します。職務内容や役職はもちろん、与える権限や求める責任の程度など、各要素を踏まえた検討が必要です。また、自社基準だけでなく、業界の平均水準や動向なども加味し、労働者にネガティブな印象を与えない範囲に設定します

7-4. 募集要項の掲載・選考の実施

準備が整い次第、各媒体への掲載を開始し、随時選考を行います。なお、この段階までに、ジョブ型雇用による採用実施について社内への周知・説明を行いましょう。

8. まとめ

近年ジョブ型雇用が浸透し始め、自らの能力を活かしきれず持て余していた人材や、何らかの理由により働き方に制限がある人材も採用しやすい状況が整いました。即戦力となる人材確保も実現しやすくなり、事業を加速させる足がかりとなる期待も持てます。

ただし、必ずしもジョブ型雇用が有効なわけではありません。メンバーシップ型雇用からも享受できるメリットは多々あります。

大切なのは、自社にマッチした手法を取り入れることです。そのことを第一に考え、事業にプラスの効果をもたらすベストな人材が確保できるよう取り組みを進めてください。

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