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エグゼクティブ層の採用とその生かし方

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経験豊富な優秀人材をどう口説く?

スタートアップベンチャーや、老舗の中堅企業、あるいは業界のリーディングカンパニーなど、企業のさまざまなステージにおいて、経験を積んだエグゼクティブ層の採用が必要になることは少なくありません。その具体的なプロセスや採用人材の設定については、なぜ外から経験者を採るか、何をやってほしいかによって異なってきますが、「どう口説くか」には共通するものがあります。
以下の4つがポイントです。

①会社や事業の大きなビジョンを魅力的に語る

経験豊富な優秀人材は、他社から見ても魅力的であり、過去も含めて複数の会社から声をかけてもらっているケースが多いでしょう。その中から一緒に仕事をしてもいいと思うくらい興味を持ってもらうには、現在の会社や事業について「説明」するだけでは不十分です。自分たちの言葉で、未来やビジョンにワクワクするように「魅力的に語る」ことが必要です。それを面談や面接の場で行うことはもちろんですし、ネットや媒体を通じて意識的に情報発信していくことも大切です。一部上場の、とある老舗では「いかにして業界を変えていこうか」というテーマについて、数多くのイベントやインタビュー取材の機会などに、まめに発信をしています。優秀人材に声をかけるときは、そうしたイベントレポートや取材内容を読んでもらうことで、これからやろうとしていることを理解してもらいやすくなります。公に発信していることで、その本気度合いも伝わるので大変よいやり方だと思います。


②「なぜあなたが必要か」を具体的に話す

一方で、転職はリスクが伴うのは当然のことで、ワクワクする未来やビジョンを見せられただけでは、実際にジョインしよう(一緒に働こう)という気にはなかなかなりません。そこで大事なのは、なぜ「あなた」でなければならないか、を具体的に話すことです。過去の経験でも人柄の部分でも構いませんので、「こういうスペックの人材が欲しい」ではなく「あなたが欲しい」と伝え、その理由を明らかにしてください。


③社長自身が、当社に来るメリットと一緒に、想いを直接伝える

エグゼクティブ層を採用しようと思ったら、どんなに大手企業であっても社長自身がきちんと向かい合って話をする必要があります。社長が会う前に、人事側で事前に候補者の欲していることを整理しておき(その人が仕事に何を求めている人なのか、現職で物足りないと感じているのはどこなのか、条件面はどうか、など)、それを踏まえたうえで「当社に来てくれれば、あなたの〇〇〇という想いを叶えられると思う」「あなたの〇〇〇なところに魅力を感じているから、ぜひ力を貸してほしい」といった内容を直接伝えていただけたらと思います。社長が口説きに協力的な会社はエグゼクティブ採用に成功しやすいといえます。


④会社側がどうしてもはずせない条件以外は柔軟な姿勢で調整する

どうしてもジョインしてほしい経験豊富で優秀な人材と話がついたら、あとはどういうステップや条件で参加してもらうかをすり合わせます。そこで大事なのは「絶対この時期までに入社してほしい」とか「必ず正社員でなければならない」という「会社側の都合」を全面に出すのはやめたほうがよいということです。逆に「絶対はずせない」条件があるのであれば、その背景も含めてきちんと説明し納得してもらうことが必要です。候補者の事情や意向をすべて汲み取る必要もありませんが、お互いの想いをよく聞きあったうえで、納得のいく条件ですり合わせることが重要です。その人材が活躍してくれることを考えれば、付属的な条件に妙に固執することは本末転倒だからです。

採用後に活躍いただくには?

さて、経験豊富な優秀人材を採用できたとして、そこで満足していては意味がありません。時間とお金をかけて引っ張ってきたなら、少なくとも想定通り、できれば想定以上の活躍をして、結果を出していただかなければ採用成功とはいえません。そのためにはどういう配慮が必要なのでしょうか。

①受け入れ側の体制を作る

エグゼクティブ層が外から組織にジョインするということは、現組織において、うれしいことだけではありません。中には自分のポジションをとられてしまうのでは、という本質的でない部分で敏感に反応する人たちが出てきてしまうケースも見られます。そのためには、トップの決定として、こういう背景でこういう役割でこの人にジョインしてもらうことになった、という話を、現場の、特に要職についている立場の人たちに正確に理解してもらうことが必要です。
この受け入れ体制作りで手を抜くと、採用することでプラスどころか組織に亀裂が入り、マイナスの結果を招いてしまうことがあるので要注意です。


②採用した人材に明確な立場と権限を与える

エグゼクティブ層の採用にはずせないのは、「立場(=役職)」と「権限」を与えることです。1で述べたように、受け入れ側の現組織の人たちの中には、エグゼクティブの採用に面白くない気持ちを持つ人も少なくない一方で、入社する方は結果を出す必要があるわけです。結果を出すには、組織の協力なくしては成せないので、無意味な抵抗や反発は避けなければなりません。その際、多少最初は強引かもしれませんが、役職と権限があることで物事を進めやすくなるのは事実です。一番良いのは受け入れ側の組織が新しい人材を心から歓迎の気持ちで迎えることであり、そのために1が大事なのですが、立場と権限を与えることもエグゼクティブがスムーズなジョインをするひとつの大きなポイントになるといえるでしょう。


③入社後しばらくはこまめにコンタクトし、現状を確認フォローする

実際に入社したら、少なくとも3ヵ月~半年程度は、本人と受け入れ組織の双方をこまめにフォローしましょう。それぞれから仕事の状況、そして人間関係や気持ちの率直なところを聞くことで、新しい組織になったことによる問題を早めにキャッチし、対応することが可能になります。このフォローを怠ると、問題が発覚した時には手遅れで組織が混乱してしまい、業績まで落ち込んでしまう、という最悪の結果を招きかねませんので、十分留意してください。

エグゼクティブ層の採用は諸刃の剣

企業運営において、昨今のスピード感ある事業展開や、専門性の必要な制度や領域の増加ゆえに、経験豊富なエグゼクティブ層の採用は必須のものとなってきています。しかし、どのような人材をどう口説いてジョインしてもらい、その後どう組織の中で力を発揮してもらうか。つまり、エグゼクティブの採用が成功するかどうかには、センシティブなステップが必要です。一概に候補者が出してきた実績だけを見て、なにがなんでも口説き落としてジョインしてもらっても、会社の繁栄に役立つどころか、その人が元凶になり、会社がバラバラになる、ということも考えられるということです。そうならないためにも、双方がビジョンの共有をし、入社直後の期待値をすり合わせ、受け入れ側の心を開いた状態で、覚悟をもって仕事に取り組んでもらうようなサポートを人事はしていなかなければなりません。





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【著者】
小田切郁子(㈲インターブリード シニアキャリアアドバイザー)

1995年、早稲田大学第一文学部卒業後、株式会社リクルート入社。じゃらん営業、ゼクシィ編集・事業企画・メディアプロデュースを経て、30歳で出産のため退職。出版プロデューサー、EAP(従業員支援プログラム)コンサルタントを経て、2006年人材紹介業界へ。現在は、事業開発、経営企画を含むマーケティング領域(ジュニア~エグゼクティブ)と、経営周り(CXO、部長クラス)の人材を中心に支援を展開。その他、組織コンサル、採用コンサル、研修講師、株式会社HRデータラボにてマーケティングディレクターとしても活動中。

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