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相手を惹きつける研修のポイント

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トップセールスマン=研修や指導が上手、とは限らない

企業の成長サイクルを回し続ける上で、トップセールスマンやスーパーバイザーなどのノウハウを、上司や同僚、部下に惜しみなく伝えていくことは、企業として重要な財産であり、最終的には顧客を守ることにもつながります。
ところが実際には、B to Cの反響型営業において、企業のトップセールスマンから「効果的な研修」「魅力的ある研修」をするためにはどのようにしたらよいかと相談されることがよくあります。
意外に思うかもしれませんが、トップセールスマンでも不特定多数の前では、自分のスキルをどのように伝えればいいのかわからない場合が多いのです。実は私もその一人でした。
一体、それはなぜでしょうか。
まず1つ言えるのは、彼らが誇る営業力というのは、一人ひとりの顧客との対話を大切にしているためです。
対話をする際には、売るためにセールストークを磨き、その商品の魅力を伝える、「伝える力」が大事だと思われているかもしれませんが、むしろ、トップセールスマンの多くは顧客の願望を聞き出す「聞く力」を重視しています。つまり、「伝える力」の前提として「聞く力」が必要なのです。
顧客(相手)の考えや意向、困りごとを「聞き出し」する過程で、真摯に耳を傾け、本当に顧客にとって有用な情報を提示していくことで、次第に顧客との間に信頼関係が構築できていきます。その信頼関係を踏まえた上で、こちらの商品を提案していきます。ここで初めて「伝える力」を発揮させるのですが、土台がしっかりとあることで、プレゼンはより効果的になり、次につながる営業となりえます。

しかし、研修は相手が不特定多数となるため、少々勝手が異なってきます。相手の意見を聞く機会がないため、序論から聞き手を惹きつけるプレゼン力(伝える力)が必要となるわけです。
私はビジネスでのプレゼンを漫才で例えることがありますが、序論は漫才でいう「つかみ」の部分。営業も研修も漫才も、人を惹きつける、魅了する、喜ばせる、楽しませる、感動させる、という意味では基本的な目的に違いはありません。同時に、自分の考えていることを他人が受け入れやすいように表現する力は、どの職業であっても、どのような場面でも実は必要不可欠なのです。

相手の心を惹きつけるポイント

ところで、研修やプレゼンというのは、単なるアイデアの寄せ集めであってはなりません。
内容を詰めすぎると全体の印象が弱まってしまうためです。自分の中での経験や見聞を生かしたアイデアを紹介するときには、1つのトピックを情熱的に演出することに集中した方が良いでしょう。少ないトピックを、深く掘り下げることで、聞き手に対して印象を強く残すことができます。
さて、研修や講習の真の目的は、価値のあるアイデアや経験を世に広め、聞き手にこの世界をより良くする行動を起こしてもらうことです。「価値あるアイデア」というと大層な響きのように思えるかもしれませんが、提案しているのは誰でもできそうな小さな行動であることが多いもの。このとき、小さな行動とは、コストをかけずに短時間で簡単に実行できるものを指します。
実は、あまりに大きなメッセージを伝えようとするとプレゼンの印象がぼやけてしまい、効果が大きくないのです。聞き手が、「これなら自分にもできそうだ」と自分事にしやすいメッセージの方が心に残りやすい傾向があります。
話を終えたときに、自分の伝えたかったことを聞き手は本当に理解してくれている状態になっているか?
トークを始める前には、そのことを確認しておくべきでしょう。

研修の演出の構成は2つのタイプがある

研修の構成についての効果的な方法として、大きく分けて2つのタイプがあります。
1つ目は、演出を行う人が、1つのストーリーに沿って演出を進め、自らの経験談を一人称で語るというタイプ。
2つ目は、プレゼンを行う人が主張を見出しとし、いくつかの構成要素に分けて順に明らかにしていくタイプ。

実際は、後者を採用している方が多いようです。それは、トーク内容にもよりますが、自分が言いたいことをキャッチフレーズとして上げつつ細かく分けて伝える方が、聴衆を飽きさせることがないからでしょう。
そして「伝えたいこと」は、実体験に基づいて、エピソードとして語るとより効果的に伝わります。
ただ、自分の経験や見聞からエピソードを持ってくるといっても、事実を淡々と語ればよいというわけではありません。大事なのは「語らずに示す」ことです。
聞き手の気を引き、飽きさせないためには、ダラダラと喋らず「うまく示す」ことを意識しましょう。
「百聞は一見に如かず」で、語るときには目に見える形で「示す」必要がときにはあります。
とはいっても、実際は自分の経験を体で表現するわけにはいきません。
エピソードを「示す」ためには、話している中で、時間、状況、雰囲気などを明確に盛り込むと良いでしょう。具体的には、会話や登場人物の具体的な描写をすることで、自分の経験をいきいきと再現するのです。すると、聞き手は五感をフル活用して、その表現を自分の中に再現しようと試みることでしょう。聞き手が話し手の人物の話をただ聞いているよりも、これはずっと効果的です。
聞き手が情景を思い浮べると同時に、ワクワクとした気持ちが湧き上がってくるはずです。これは、心が動いた証。行動につなげようと、奮い立つきっかけとなります。

研修で使う言葉の選び方

研修において、言葉の選択は大切ですが、講師の役割は、豊富な語彙を披露することではありません。聞き手の関心を惹きつけ、奮い立たせることです。できる研修講師は、子供でもご年配の方でも誰でもわかるシンプルな言葉を選びながらも、ダイレクトに響く使い方をしています。専門用語を並べ立てうんちくを語るよりも、シンプルで、かつ深みがある言葉を精選する方が聞き手に印象を残します。
そのためには、むしろ言葉が必要無い場合もあるでしょう。この「間」は、れっきとした演出の一部。沈黙の間さえも計算していくことで、聞き手は研修を実りあるものとしていきます。
ちなみに、「間」は、聞き手の理解を深めさせる時間であったり、話し手の人物が聞き手の反応を確かめたりする時間に当てられます。
また、いくつかのジョークを挿入することも演出の鍵です。例えば、最初にジョークを入れてアイスブレイクをすることで、聞き手もリラックスして話を聞けるようになるでしょう。
最後に、コラムのまとめとして「研修本来の意義」についておさえていきたいと思います。
いままで述べてきた研修のポイントというのは、企業の一部のモデリングとなるトップセールスマンなど突出した個人やチームだけが成長したらそれで良いのではありません。個々の育成を通じて、仕事への姿勢や技法、人のつながりの大切さを、社員に惜しみなく的確に伝えていくことが、チームの活性化に繋がり、経営者及び企業としても、質の高いサービスを維持できることになります。
そのゴールは、顧客満足、すなわち顧客をお守りすることです。
さらには、顧客、社員、経営陣、企業の関係が、共存戦略の意のWin Winよりも、「Give and Givenの精神」で、人の本質のサイクルを循環させていく方が、持続的な人の成長と企業経営につながるのではないかと思います。






【著者】
丹羽昭尋(Office Niwa Research Institute 代表)

1976年山口県周南市(旧徳山市)生まれ。高校卒業時から阪神淡路大震災の復旧支援に参加し、その傍らホテルや飲食店で接客に従事。その後、建設会社数社で設計営業などに携わり独自の営業ノウハウを確立。帰京後は最大手の家電量販店で家電コンシェルジュとして従事。入社1年目で「個人売上日本一」を受賞し、育成者でも4年連続トップセールのチームを築き上げる。その後、大手アパレル、自動車業界のオファーを経て、現在「Office Niwa Research Institute」(通称Office Niwa)の代表として、独自のノウハウで全国の企業に実務的な支援や研修を行う。また、国内外多数の戦略的コンサルティングファームのアドバイザーとしても従事し、活躍の場を広げている。著書には「日本一の売る技術」(きずな出版社)。メディアでは「致知」(致知出版社)など多数紹介。2018年3月には2冊目の著書を出版予定。


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