セミナーレポート
マイナビ顧問主催
働き方改革・ソリューション
― 今、貴社で最も優先されるべき” 働き方改革 ”をどう進めていくべきか ―
業種・業界、会社規模に関わらず、すべての企業が今、直面。選択肢が多いゆえに、どちらの方角へ舵を切って良いのか? 経営者の誰もが戸惑いを感じるなか、国が主導する「働き方改革」に向けたイベントを、マイナビ顧問が開催させていただきました。その名は『働き方改革・ソリューション』(1月29日、東京・京橋のマイナビルーム)。マイナビ顧問が保有するネットワークとリソースを総動員して、皆様をご支援させていただくためのイベントです。
今回は「今、貴社で最も優先されるべき“働き方改革”をどう進めていくべきか」の副題のもと、マイナビ顧問選りすぐりの各分野のエキスパートが集結。午前11時から午後7時前まで行われた、1コマ約90分間の密度の濃いセミナーの簡単なダイジェストをここにお伝えさせていただきます。
3テーマ | ものづくり現場における 業務プロセス改革 生産性向上 |
職場(貴社)における 社員の意識改革 生産性向上 |
サービス業における 人に頼らない 生産性向上 |
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10:30~10:55 | オープニングセッション
『中小企業政策の変遷』 新 欣樹様(元中小企業庁 長官) |
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11:00~12:30 | 【セミナー①】 高生産性を実現する仕組みづくり 講師紹介:曽根孝典様 三菱電機㈱出身 中小企業診断士 |
【セミナー④】 目標設定とマネジメント 講師紹介:大須賀泰昌様 レックコンサルティングオフィス 代表 |
【セミナー⑦】 AI活用によるコスト削減 講師紹介:酒巻隆治様 DATUM STUDIO㈱ 代表取締役 |
《個別相談タイム》 | 《個別相談タイム》 | 《個別相談タイム》 | |
13:30~15:00 | 【セミナー⑤】 意識改革「自分分析シート」 講師紹介:小寺岳様 一般社団法人 プロフェッショナル顧問協会理事 |
【セミナー⑧】 間違った「働き方改革」 ~売上・利益を上げる「時間削減」と実践例~ 講師紹介:正金一将様 大手飲食店チェーンの 取締役などを歴任 |
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《個別相談タイム》 | 《個別相談タイム》 | ||
15:15~16:45 | 【セミナー⑩】 『社長の働き方改革≒事業承継』 講師紹介:玉井哲史様(公認会計士)元大手監査法人 シニアパートナー、税理士法人アクリア 顧問 |
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17:00~18:30 | 【セミナー③】 企業改革プロセスPDCAの事例 講師紹介:越丸茂様 テラプローブ㈱元代表取締役会長 |
【セミナー⑥】 IPOを見据えた 経営者目線での働き方改革 講師紹介:野村正一様 元外資系広告代理店 人事ディレクター、 ㈱カレイドスコープ代表取締役 |
【セミナー⑨】 ロボット、IOTの活用 講師紹介:竹内裕喜様(工学博士) 産業技術総合研究所 知能システム部門研究職主任、 東京工業大学大学院客員研究員、 ㈱POYNTER 代表取締役 |
《個別相談タイム》 | 《個別相談タイム》 | 《個別相談タイム》 |
オープニングセッション
中小企業政策の変遷
新欣樹(あたらし・きんじゅ)氏
オープニングセッションは元中小企業庁長官の新欣樹氏による「中小企業政策の変遷」です。
まずは、誰もが知っていそうで、意外と知られていない「中小企業の定義」を正確に説明することからスタートし、1963(昭和38)年の施行以来、2度にわたって改正された中小企業基本法を軸とした政府の中小企業政策の歴史をわかりやすく説明いただきました。
大企業の安定性と、改革の波に乗り遅れた中小企業という二重構造覆われる日本社会の現状。阪神淡路大震災(1995年)における政府の金融政策、「中小企業」の定義を拡大した1999(平成11)年の中小企業法抜本改正などについて、当時のリアルな現場の空気とともに伝えてくれました。
中小企業の半分が黒字を維持しつつも、後継者が見つからないゆえに廃業を余儀なくされているという現状に、新氏は「このまま放置すると(日本社会は)大打撃を被ることになる」と警鐘を鳴らし、「識者の施策を知っておき、利用すべきものは利用すべきです」と受講者にエールを送ってくださいました。
セミナー①
高生産性を実現する仕組みづくり
曽根 孝典 氏
長年、三菱電機に勤務し、理学博士(統計物理学)や中小企業診断士、日本生産性本部認定経営コンサルタントの資格も有する曽根氏。培った経験や知識から企業が目指すべき姿を「高生産性の実現により高賃金と適正分配率を両立させる」ことと定義。企業の置かれた現状を「無理状態(事業困難)」、「危険状態(存続困難)」、「不満状態(人材流出)」、「理想状態(事業発展)」と、4パターンに分割し、説明した。
適正な労働分配率実現のための付加価値アップを訴えつつ、「コンサルタントなどの外部有識者の支援(外部支払)によって、売上が上がっても、それは付加価値が上がったことになるのか?」と問題提起したうえで、組織の内部にこそ付加価値を生み出す仕組みを作ることの重要性を説いた。
その他、「働き方改革実現会議」で提示された9つのテーマや生産性の革新を生む仕組み、従業員の共感を得る戦略立案のプロセスなど、数々の具体策を実例で提示。
セミナー③
企業改革プロセスPDCAの事例
越丸 茂 氏
日本電気(NEC)で半導体メモリのデバイス開発等、技術畑を歩まれ、1998年から2003年まで5年間の米国生活を経て、日立との合弁会社・エルピーダメモリ(現・マイクロンメモリジャパン株式会社)に転籍後、2007年からはテラプロープの社長、会長を歴任した越丸茂氏は「企業改革プロセスPDCAの事例」について講義を行った。
企業人として40年のキャリアを歩まれてきた越丸氏は「やらざるを得ない台湾や韓国の企業と違って、日本の企業は『やればできる』けど、やっていない。だからこそタチが悪い」と多くの国内企業が陥る風潮、停滞の原因を一刀両断。
「会社と社員、相互の利益が大切」、「ゴールは双方にとっての利益となるもので、それは社員にとって待遇の改善、会社にとっては業績の改善である」と明確な言葉で指針を示します。決して一方的な言い分には陥らず、フラットで多面的な視野を持ちつつの意識改革の必要性を唱えた。
改革のステップ案として ①意識改革 ②課題の抽出とソリュージョンズの(みんなでの)策定 ③目標の設定~実行 ④進捗の分析とフィードバック とプロセスを説明。現場を取り仕切るマネジメント力こそが成功の鍵となることを訴えた。
セミナー④
目標設定とマネジメント
大須賀 泰昌 氏
地元の愛媛県松山市と東京を拠点に『レック コンサルティング オフィス』を立上げ、経営コンサルタントとして活躍する大須賀氏の講演テーマは「目標設定とマネジメント」。
大須賀氏は、いまだ多くの日本企業で、隣のグループが何をやっているかも把握しづらい「縦割り組織」の呪縛に囚われている現状に着目した。組織の中で、個人と企業を連動させつつ、グループとして成果を上げる方法を、具体的な企業が抱える悩みや問題点を交え、わかりやすく説明した。
部署やグループを越えた会議の場で目標設定を立てたとしても、必ずしも正確な成功事例が出てくるとは限らないと、大須賀氏は語る。その理由を、「それはヨソの部署やグループに(自分たちのノウハウを)真似されたくないという意識が表れるからです」と鋭く指摘。
また「例えば、製造業であれば納期遅れ対策を縦割り組織で話し合うと、必ずや他部署の悪口だけで終わってしまう」とも指摘。
会社という組織内で起こりうる、非生産的な事例を「会社あるある」とでも言うべき、軽妙な語り口で説明していた。
このセミナーで、大須賀氏は「能力開発」と「成果」の明確な違いを頭に入れたマネジメントの重要性を説いた。そして、そのマネジメントをキチン行うことで自社内をコントロールしていけば、最終的に売上アップにつながっていくと力説した。
セミナー⑤
自分分析シート
小寺 岳 氏
一般社団法人プロフェッショナル顧問協会の理事を務める小寺岳氏は「意識改革『自分分析シート』」というテーマで講演。
「企業が目指すゴールを実現するために、やれる事・やるべき事は何かを明確にし、それを共有すること」
「社員が自己分析をすることで、意識改革し、企業全体の事を『自分事』として認識するようになる」 と、熱を込めて説いた。
小寺氏は、集まった受講者全員に「みなさんの夢は何ですか?」と問いかけた。自身は「135歳まで生きる!」と前人未到の目標設定を掲げ、普段からそれを堂々と広言していることを明かす。「自ら発信すること」「自分を変えていくという意識」という姿勢こそが、大切だと語る。そして、それが小寺氏の信念である「3つのch(change=変革する勇気、challenge=挑戦する志が、chance=好機を掴む)」へとつながるのだった。
その昔、エンゲージメントとは社員の会社への「愛着心」や「思い入れ」、ある種の忠誠心をもって表されていた。しかし、今はそういった時代ではないと小寺氏は語る。「組織と個人が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係こそが求められている。だからこそ、会社側、勤める側と双方に意識改革が求められている。」と訴えかけた。
セミナー⑥
IPOを見据えた経営者目線での働き方改革
野村 正一 氏
人事業務サポートを中心とする株式会社カレイドスコープを設立し、自ら代表取締役を務める野村正一氏は「IPOを見据えた経営者目線での働き方改革」のテーマでセミナーを行いました。
最近、国内でも導入する企業が増えている「目標設定制度」について、野村氏は人事スペシャリストの目線から「それで評価をした結果、どうなるの?」と疑問を隠しません。そこで現在、外資系企業を中心に流行しつつある、あえて社員の評価をせず、ランク付けもしない「ノーレイティング(No Rating)制度」を紹介。3か月に1回だけ上司とのミーティングが行われ、そこでの評価結果は昇給とも関係ないというシステムです。ただし、NR制度を導入するには、部下全員の仕事内容、進捗状況を正確に把握できる、高い能力を持ち合わせた上司の存在が不可欠という難しさがあるそうです。
野村氏は働き方改革への支援について「働く時間改革」(労働時間管理と企業の法的なリスクをヘッジする方法)、「働く仕組み改革」(評価制度の変化、労働力の確保をどのようにしていくか?)、「業務効率改革」(技術革新によって、AI/RPA/IoTなどを効果的に取り込み、メイン業務の労働力へと誘う仕組み作り)と3つの柱を掲げ、それぞれの具体策を提示。現在進行形のニーズにマッチさせるべく、さまざまな方法を提案して下さいました。
セミナー⑦
AI活用によるコスト削減
酒巻 隆治 氏
企業へのAI(人工知能)導入が積極的に叫ばれる昨今、まだ何ができるのか? 具体的に何をすればAIを企業の利益向上へとつなげることができるのか? と二の足を踏む経営者も多いようです。
AI活用で、「販売実績による予測」「集合知に基づく予測」「異常状態の予測」を3本柱に、専門家の知能の代わりとなる人工知能を構築する『DATUM STUDIO㈱』の代表取締役・酒巻隆治氏は「AI活用によるコスト削減」をテーマに講演しました。
酒巻氏はまず「あなたの会社では、どのような未来がわかれば儲かりますか?」と受講者に質問を飛ばし、ダイレクトにAI活用により手繰り寄せられるべき事例を説明します。天気予報の例を出すまでもなく、すべての予想は、人間が積み重ねてきた経験値によって図られてきました。AIはこれまで人間が悠久の時間を経て蓄積した経験値からの判断を、ビッグデータと機械学習によって、より正確に算出してしまいます。
たとえば、これまで人が経験に基づく感覚で行ってきた「タレントが売れるか、売れないか?」などの判断、あるいは農作物や牛や魚を、より大きく、美味しく育てるための手法なども、過去の天候、栄養事情など大量に蓄積されたデータから、最適な道しるべを示すことができるのです。
酒巻氏は「AIは『ないもの』に対しては無力ですが、人の経験を超えられます」と断言。来るべきAI時代に向けた「準備と備え」の大切さを訴えました。
セミナー⑧
間違った『働き方改革』
『売上・利益』を上げる『時間削減』と実践例
正金 一将 氏
これまで大手飲食店チェーン数社の役員を歴任してきた「企業再生人」正金一将氏は、「間違った『働き方改革』~『売上・利益』を上げる『時間削減』と実践例」のテーマで講演。これまで自身が歩まれてきた波乱万丈の企業再生経験をもとに、熱弁をふるいました。
徹底した「現場主義」を掲げる正金氏は「改善点は会社の上にいるよりも現場サイドにいたほうが、よく把握できるんです」と語る通り、その飲食系企業に請われると、役員待遇で入社したにも関わらず、まずは現場のホールや厨房でアルバイトと一緒に汗を流し、そこから企業の抱える問題点を解析する手法にこだわります。大手回転寿司チェーンに在籍した頃は、ストップウォッチを片手に、あらゆる作業を10秒ごとに分解&分析することで、全労働時間を組み直し、たった3か月間で40%も労働時間を削減したという“武勇伝”を披露しました。
また正金氏は「使えるお金に限界があることは、みんな知っているのに、なぜか労働時間に関しては『限界がない』と信じ込んでいる」と、多くの日本企業が抱える悪癖にも鋭くメス。「お金も時間も有限。『これだけしか労働には時間を使えない』というところから工夫が生まれるのです」と厳しく言い切った。
セミナー⑨
Robotics,IoT,
Drone,Deep Learning
(深層学習),機械学習,人工知能による
業務・サービスでの応用
竹内 裕喜 氏
ロボット工学博士でもある竹内裕喜氏は、株式会社POYNTERを起業し、さまざまなIT分野の技術顧問・技術コンサルタント、ChatBot、故人再生プロジェクト、オンラインバイリンガル秘書、人工知能・Roboticsサービスなどを手がけています。今回のセミナーでは「Robotics , IoT , Drone , Deep Learning(深層学習), 機械学習 , 人工知能による業務・サービスでの応用」について講演を行った。
竹内氏の講演は、専門性の高い分野のため、当初の予定では講演という形態のセミナーではあったが、竹内氏に個別相談するような形式でセミナーは進行していった。
マスコミ報道などで広がったAIやITに関する間違ったイメージ(例・自動車の自動運転もドローンも、AIだけで実現しているわけではない。AIにプラスして綿密な制御工学が必要となる)を払拭すると同時に、AIで「できること」と「できないこと」の実例を挙げた。セミナーに参加した参加者からは「AIで業務を改善したいがどうしたら良いか?」「ロボットやIoTを導入できるのか?」「DeepLearningをについてもっと教えて欲しい」などの質問が多くあがった。
また話題のAIの指標は「どのデータを使っているかにもよる。もっと言えば、どこの会社が作ったかによっても変化する」と、AIに万能感を抱きがちな層に、注意を促すことも忘れませんでした。
特別セッション
社長の働き方改革
~事業承継について~
玉井 哲史 氏
午後3時15分からの特別セッションは、元大手監査法人のシニアパートナー、税理士法人アクリアの顧問を務める公認会計士・玉井哲史氏をお迎えし「社長の働き方改革~事業承継について~」というテーマで講演していただきました。
大中小問わず、どんな企業にとっても、避けては通れぬ大きな節目であり、その方法を誤ると死活問題にもつながるのが社長の後継者問題です。「社長の働き方改革」には多岐の要素が詰め込まれますが、将来的な会社存続を踏まえた場合、まずは、もっとも重大事となるのが後継者の選定等を含む事業承継なのです。
玉井氏は、さまざまな企業が直面してきた実例を挙げました。あらかじめ綿密に事業承継計画の策定等を行った上で、息子の社長職を譲り、株式譲渡の時期、後継者教育などに数年をかけ、その承継計画を主要取引先や金融機関にも開示し、後継者と二人三脚で事業承継を実行。業績を順調に伸ばしたという成功事例もあれば、反対に特に対策を練らないまま息子に社長職を譲ってしまったがために、社内不和を主因として赤字転落。あらためて社長を解任したところ、取引先からの信用も失った失敗事例もあります。どの事例も企業を率いる経営者にとって他人事ではありません。
事業承継は短期で遂行できるものではなく、一般的に5~10年を要すといわれます。だからこそ企業を内部からでなく、外側から冷静に観察し、社内の利害関係なくジャッジメントできる外部有識者の意見が必要となるのです。
また玉井氏は、知っているようで知らない「事業承継の際の相続税・贈与税の納税猶予お呼び免除制度」についても、各都道府県の申請窓口、問い合わせ先の一覧が付いた別冊資料を配布し、細かい部分まで説明してくれました。